みなさん、夜眠るときになにを“着て”寝ていますか。
ぼくはというとですね、最近はパジャマを着て寝ています。そうパジャマ。
パジャマは良いぞ。
パジャマを着なくなったぼくら
ぼくが推測するに、人のパジャマ離れはだいたい小4くらいから始まると思ってる。
まず小4くらいになると体験学習といった名目の宿泊を伴うイベントが学校で発生する。その時にはじめてクラスメートたちと学校以外のところで1日以上寝食をともにするのだ。
小4というのは徐々に周りの目を気にし始める年頃で、同級生の目を気にし始める。
その時に夜クラスメートと一緒に過ごすのに、寝間着になにを着るかを考える。
そこでふと頭をよぎる。完全に家でしか身に着けず、なおかつ人目につくものではないパジャマのことを「ちょっと恥ずかしいもの」なんじゃないかと。(年上の兄弟がいる場合そのことに気づく確立は高い)
お風呂から出て、普段着から着替えたのがパジャマだったら、もしかしたらクラスメートから笑われてしまうのではないかと。
そこで寝間着の代替案、パジャマのオブザーバーとして名乗りを上げるのがシャカシャカジャージ(下)である。アディダスとかプーマとか、スーパーの衣料品売場に売ってるあのテのやつ。
このシャカシャカジャージは有能だ、それから数年間の学校の宿泊行事に活躍する。これを履いて、Tシャツやトレーナーを着ておけば、無難にアットホーム感を和らげつつ、それでいてちょっとスポーティーな自分を演出できる。(寝る時にスポーティーさなんて必要ないのに!)
中学、高校となると宿泊行事には学校や部活のジャージ、またはグレーのスウェットなんかが台頭してくる。いずれもこの時には「自分寝るときこんな感じにユルめなんで。パジャマとかあれ、子どもか年寄りが着るもんでしょ?」といった具合だ。
ある種、だんだんファッションを気にしはじめたところに、お母さんが勝手に自分の洋服を買ってきてしまい少しイライラしてしまうような反抗期に近いかもしれない。
パジャマとの決裂
成長する中で、人々の頭のなかには一つの既成概念が成り立ってしまう。
パジャマイズお子ちゃまが着るもの。
パジャマイズダサい。
パジャマイズデッド。
そう、いつしか寝間着からパジャマという選択肢が消えてしまったのだ。
ぼくも漏れずにその一人であった。
「パジャマ?ああ、わざわざ着る必要なくない?適当に短パンとTシャツでいいでしょ。」
だがある日、ぼくはふと近所のSEIYUの2階にある衣料品フロアーの肌着コーナーの隅で、細々と陳列されたパジャマを見た。薄いパステルカラーでストライプが入り、どれもこれもセットアップで売られてる。しかも意外といい値段する。
「こんなところでパジャマを買うのは年寄りくらいのものだろう。」
だが、なぜかぼくの頭からあの日みたパジャマのことが忘れられなかった。
そしてそこには淡い、懐かしい日々の記憶が付随している。
パジャマとの再会
そして最近、だんだんと気温が上がり、寝苦しい夜になってきた。
眠る時に暑いと思って窓を開けっぱなしにすると、朝方の涼しさにカラダを凍えさせる日が続いた。かといって窓を閉めていると、自分の体温であっという間に部屋は暑くなってしまう。長袖を着ると寝汗をかくし、まだクーラーをつけるには時期が早すぎる。この季節の変わり目、どうしたものか。
Oh...!パジャマがあるじゃないか。
パジャマって長袖でも生地は薄めだし、それどういうことだよ、って思っていたがそういうことか。
点と点が繋がり、線になった。
ぼくはパジャマを買った。そして着て眠った。
この時期でも薄めの生地がカラダを包むことで、朝方の肌寒さから身を守り、またゆったりしたシルエットであることで、長袖でも手足の隙間から涼しい風を通す。汗をかいたとしても、薄くサラッとした生地ならすぐ乾く。
すべてが理に適っている。すなわち先人たちの叡智。快適な眠りのための知恵。
だがそれだけじゃない。なんだろう、このパジャマを着た時に感じる安心感は。ノスタルジーにも似た心地よさは。
その正体は、ぼくがパジャマと再会した時に感じた、あの懐かしさだった。
パジャマとぼくら
小さい頃、パジャマを着るということは、眠ること。その日の終わりを意味した。眠りたくないが、眠らないと親に怒られる。そういう夜というのは、オトナの時間だと思っていた。
眠りたくない、そんなことを考えていても、布団に入れば心地よく眠ってしまう。
仕事だなんだんで、次の日が来なければいいのに、なんてあの頃は思ったこともなかった。
学校、友だちと遊ぶ、ミニ四駆、夏休み、家族旅行、お祭り、野球、ポケモン、少年ジャンプ、アニメ、学校を休んだ時に観る教育テレビ…
そんな、不安のない希望や楽しさに満ち溢れてた日々。
パジャマを着るとあの頃を思い出すことができる。
パジャマを着た時に感じる安心感の正体はこれだった。
パジャマを着ることをやめてから、ぼくたちは歳を重ね、大人になり、日々不安や悩みを抱えて床につく。
次の日が楽しみで仕方ない。そんな気分で眠り、朝目覚める人のほうが少ないのではないか。
だからこそ、パジャマを着て寝てみて欲しい。
薄くサラッとした生地に身を包む感覚を再度思い出して欲しい。買うなら、パジャマっぽいパジャマを。謎に襟が開襟の、それでゴミを捨てに行くのは少し恥ずかしいと思うくらいにパジャマっぽいパジャマを。
寝間着を変えたくらいで、人生はなにも変わらないと思う。
けれども、すこしでも今まで違う気持ちで眠りについたら、なにか普段気づかなかったことに気づくきっかけになるかもしれない。
だから、歳を取ってからのパジャマ、悪くないと思います。
ーーー
ちなみにぼくはこれじゃないけどGUのパジャマを着ています。
我こそはパジャマ派だという方いらっしゃったら教えてください。
(出典:ジーユー|パジャマ(半袖)|MEN(メンズ)|公式オンラインストア(通販サイト))